アンコール・ワットの二形(ふたなり)

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(アンコールワット、第三回廊からの眺め、染谷撮影、2010年)

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八月中旬に出版される『男色を描く-西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉』(染谷智幸・畑中千晶編、勉誠出版)は、出版のきっかけが西鶴の『男色大鑑』のコミカライズだったので、私のブログでも、コミカライズのことを中心に書いてきました。

しかしながら、今回の本は二部構成で、前半にそのコミカライズの問題を取り上げ、後半にはコミカライズも含みつつ、東南アジアのタイやカンボジア、南アジアのインド、そして東アジアの中国における〈性〉のダイバーシティ(多様性)を取り上げています。

タイ・インドの外国籍の方を始め多くの方に、このアジアの多様なる〈性〉の世界を、あるいは語っていただき(座談会)、あるいは叙述していただきましたが(エッセイ)、最初の読者(編者の特権ですね)になった感想を言えば、これが実に面白いのです。

そんなことを言うと、販促のための物言いだろうと言われかねませんが、その批判は甘んじて受けるとして、とにかく一度読んでいただければと思います。

私は、ここ十数年、色々な理由で、アジアの国々へ出掛ける機会を持ちましたが、行ってみて驚きの連続でした。それまでは、日本の〈性〉の世界は豊かで自由だと思って来ましたが、それは欧米などに比べるからで、アジア全般を見渡せば、いやはや何とも、日本はまだまだと思われてくるのです。

それを特に感じた国は、タイ・カンボジア・ベトナム・ミャンマーなどですね。

その街へ一歩踏み入れれば、〈性〉のダイバーシティの匂いがプンプンするのです。それはまた街だけではありません。遺跡でも同じ匂いがします。

たとえば、世界遺産のカンボジアのアンコール・ワット。その第一回廊のレリーフを見ますと、これが何ともすごい。世界の始まりを描いた「乳海撹拌(にゅうかいかくはん)」から、戦争画、地獄絵にいたるまで図柄は様々ですが、共通するのは、肉体のオンパレードです。様々な肉体、特に男性の肉体が、強烈な肉感や人いきれをその「にぎにぎしさ」とともに放っています。下はそのレリーフ(染谷撮影、2008年)

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日本の三大奇祭の一つに、岩手の黒石寺の蘇民祭りがありますね。あれは二月の寒い時期ですから、熱気ムンムンなどと可愛らしい表現で済みますが、アンコール・ワットは熱帯ですから、そんな表現で済みません。しかもおどろおどろしい戦争や地獄の場面ですから、それはもう酒池肉林の鉄板ハンバーグ・カーニバル(お前は古館か!)と言ったら良いでしょうか。

ま、とにかく、あのレリーフはアンコール・ワットの建造とともに、一見の価値ありです。

それで、今回、そのアンコール・ワットにちなんで、「アンコール・ワットの「二形(ふたなり)」」という文章を載せました。

13世紀の中国に、周達観(しゅうだっかん)という文士が居りまして、1292年にカンボジアのアンコール・ワットを尋ねています。その時の見聞を『真臘風土記(しんろうふどき)』という本にして遺しているのですが、その中に「二形」という言葉が出てきます。これを当時の中国語でどう発音したのかよく分かりませんが、日本風に言えば「ふたなり」ですね。

この「二形」が具体的にどのような人たちを指すのか、これも判然としないのですが、やはり両性、つまり男と女の両面を持っている人間を差しているようでして、周達観によれば、これがアンコールの国中に多く居て、中国人を始め多くの人間を惑わしていると書いているんですね。

当時のカンボジアはクメール王朝で、その国としての最大勢力範囲は現在のタイやベトナムを含んでインドシナ半島全体に広がっていました。そうすると、そのインドシナ半島全体に「二形」が跋扈していたということになります。

残念なことに、このアンコールの「二形」は、この『真臘風土記』以外にはまだ見つかっておりませんので、何とも言い難いところもあるのですが、他からも似たような記述が出て来れば、はなはだ面白いですね。アンコール・ワットには17世紀初に訪れた日本人の落書きや中国人の落書きが多く残っていますので、その中に「二形」がないか調べたことがありますが、見つかりませんでした。下は中国人の落書きで「大清國広東省」と見えます(染谷撮影、2008年)。

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ちなみに、『真臘風土記』の記述によれば、「二形」が跋扈していたのは、アンコール・ワットでなく、ワットの隣にある、アンコール・トムでのことです。とすれば、今回のエッセイの題目も、「アンコール・トムの「二形」」とすべきだったかも知れません。

ただ、それだと、ちょっと分かりにくいのと、「アンクル・トム」とと間違われたらまずいと思ったものですから(笑)、あえて有名なアンコール・ワットの名を付けた次第です。

いずれにしても、詳しくはエッセイをご覧ください。

ちなみに、以下の写真は、カンボジアとタイの国境近くにある、小学校を訪れたときのものです(染谷撮影、2010年)。見渡す限り、何もない草原で、少年たちとサッカーをしました。なかなかの美少年が居りまして、日本に連れて来たいと思ったほどでした(笑)

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彼らとサッカーをしたのは、もう八年前ですから、きっと立派な青年に成長したでしょうね。ちょっと残念かしらん。(以上)













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