『男色大鑑』とコミックは相性が良い

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大竹直子画「侍と若衆」

 この夏に、青山学院大の授業にて「男色講座」を行い、漫画家の大竹直子さん、あんどうれいさんをゲストスピーカーとしてお招きしました。いま、その学生たちのレポートを読んでいまして、色々と考えさせられています。

 一番、嬉しくて、かつちょっぴりショックでしたのは、レポートでの学生たちの関心が、多く大竹さんとあんどうさんに向けられていたことです。生の漫画家さんの話を聞けるのは、そうそうに無いことでしょうから、それは当然とも言えるのですが、お二人の話や作品を通して「男色」や『男色大鑑』の面白さに「開眼」したという学生が多く居ました。中には、お二人の話を書いた最後に、染谷先生の話も勉強になりましたと申し訳なさそうに書いている学生も居ました。おいおい、かえって傷つくじゃん。

 いや、その私もね、お二人の話の前に、一生懸命、男色とは何かとか、説明したんですよ。教室はくそ暑いのに、汗を拭き拭き。。。┗(;´Д')┛
 ただ、6月11日のブログに書きましたが、男色と断食を間違えた学生が居たように(笑)、私の話をちゃんと聞いていない学生がけっこう居たのは否めないでしょうね。

 でも、まあそんなことはどうでも良くて、お二人のお話や漫画から「男色」『男色大鑑』の面白さが分かったという学生がたくさん出たというのは本当に良かったと思っています。鶴翁(西鶴先生のこと)も泉下でお喜びのことでしょう。

 加えて、学生のレポートを読みながら考えましたのは、『男色大鑑』のような作品をコミカライズすることの意義ですね。これは思っていた以上のものがあるのではないかと。

 学生のレポートには、いままで男色や『男色大鑑』にほとんど興味を持ってなかったと異口同音に書かれています。それはそうでしょう。男色は日陰の身、『男色大鑑』は西鶴研究で取り残された存在でしたから。。。

 そうした異文化世界に入るのに、文章の説明だけというのは、映像・画像に囲まれて育ってきた、キョービの学生さんたちにとっては、ちょっと分かりにくくてややこしい。その道案内を上手くしてくれるのが、画像、しかも良く出来た漫画(劇画)ではないでしょうか。

 ある学生は、日頃BLの漫画をよく読むけれど、こんなに美しく書かれたBL作品は初めてですと書いていました。私はBL作品をそんなに多く見ていませんが、さもありなんと思うところです。たとえば大竹さんは、上村辰弥を書くために、古物商で高額(染谷の印象!)の若衆人形を買い求めて、それをスケッチあるいはクロッキーして参考にして居られるのですから、その執念とは並々ならぬものです。よく大竹さんは「妄想」という言葉を使われますが、ちゃんと「妄想」するためには、きちんとした調査と優れた技術、そしてこだわりの執念が必要なんでしょうね。(このブログの最初に載せた大竹さんの絵はまさにその執念の結実ですね。本当に美しい。私はひそかに、木版画にしてみたら、江戸や明治の浮世絵に対抗できるのではないかと妄想しています・・・ほんとに)

 あんどうさんの絵もそうですね。あの大吉と新之助のかわいらしさ。それを遠くから見守る一道先生の優しさと、三人を包み込む柔らかい絵のタッチ。まるで水墨画の花鳥狗子圖のような・・・。

 いずれにせよ、男色のような異文化世界に入るためには、コミックは恰好のツールではないかしらんと思うのです。

 加えて、ファンタジーやミステリーのような作品なら、お決まりの方向で想像力を羽ばたかせるということも可能ですが、西鶴みたいなリアル追究の作家だと、ちと難しいでしょう。とくに西鶴は、その当人を直接思い浮かべながら書いている場合も多々あります。よって読み手も、書かれている対象をできるだけ正確に「妄想」する必要が出て来るのです。

 ちなみに過日、その大竹さんと一緒に、甲秀樹(こう・ひでき)さんの個展「Memory 青き調べ」へ行ってきました。甲さんは大竹さんから紹介される前から、その「男絵」のすばらしさに、個人的に注目してきた方ですが、今回、個展を拝見し、『人体デッサン・男性ポーズ集』を買い求め、少し甲さんとお話をさせていただきました。

 徹底したデッサンと再現。筋肉の一筋一筋を復元しようとする、そのリアルへの執念にはすさまじいものがあります。

 大竹さんやあんどうさん、そして甲さんの絵に対する姿勢を見て、私たち文学研究者も、西鶴をはじめとする文学作品の注釈や解説、訳、そして二次創作にも徹底した「リアル感覚」を追い求めなければいけないと実感した次第です。それにしても、昨今、すごい方たちと知り合いになるチャンスに恵まれています。縁(えにし)に感謝しないといけませんね。

 なお、最初の絵は大竹さんの作品ですが、勉誠出版でこれをカードにして、来週24日のB&B(下北沢)のトークショーの折、『男色を描く』を買っていただいた方にお配りするそうです(カードはもう二枚あって、三枚でセットです)。どうぞ足をお運びくださればと存じます。(以下のURLは、B&Bのサイトです)




























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