トーベ・ヤンソンとトム・オブ・フィンランド

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(ヘルシンキのトラム)

10日間のフィンランド、エストニア滞在から帰国しました。
学生を21名連れての訪問でした。

そんなに沢山の学生を、と思われるかも知れませんが、誰ひとりとして風邪も腹痛もなく、みな元気に研修を終えました。

そうした素敵な旅ができた背景は色々ありますが、何と言っても水の良さでしょうね。フィンランドの水道は飲めまして、それが実に美味しいのです。出掛けるときには使ったペットボトルに水道を入れて、それでOK。ご存知のように、フィンランドを始めとする北欧は物価が高いのですが、工夫の仕方によっては実に快適に過ごせるように出来てますね。パンやジャガイモなどもすごく安いのです。

さて、そんな旅でしたが、色々な収穫がありました。一回では書けませんので、数回に分けて話をしたいと存じます。

まず、トーベ・ヤンソンとトム・オブ・フィンランドです。

この二人に共通するのは「気骨」で、今回の旅でそれがよく分かりました。

トーベ・ヤンソンは言わずと知れた「ムーミン」の作者です。日本で「ムーミン」というとアニメと「ねぇムーミン~」で始まる主題歌がすぐに連想されて児童のものとされてしまいますが、フィンランドではそんな枠には収まりません。

フィンランドに行ったのは今回で三回目ですが、最初に行った時に、ヘルシンキの中央駅のすぐ前にある、

アテネウム美術館 Ateneum Art Museum

で、トーベ・ヤンソン展をやっていて、そこで色々知ったわけですが、とにかくこのオバハンは滅茶苦茶に面白い!
一言で言えば変人です。酒飲みで奇行が絶えなかったようですが、その基盤には旺盛な反骨精神があったと言われています。

それを象徴するのが、第二次世界大戦中に反戦・反ナチスの論陣を張った「ガルム」という雑誌にトーベがずっと風刺画を描き続けていたことです(「ムーミン」もその反戦の中から生まれて来ました)。

そして、トーベはレズビアンでした。そのお相手は大親友として紹介されるトゥーリッキ・ピェテラです。その二人は1971年に日本へ来ています。以下はそのフィルムの一部です。


彼女の人生を知れば知るほど、ムーミンパパやスナフキン、リトルミィそしておしゃまさん等々、不思議な登場人物の背景には、そうしたトーベの反骨・気骨があることが分かってきます。

それから、何と言っても今回の旅で大きく認識を変えさせられたのは、トム・オブ・フィンランドです。

彼の存在は娘から教えてもらったのですが、ハードゲイ=レーザーゲイの世界というものに、実はそれほど興味はありませんでした。日本の江戸時代における、同性愛の基準は、少年愛、つまり美少年の華奢な柳腰、鹿のような足の美しさに求められるものでありますから。

またフィンランドという国のイメージとハードゲイ=レーザーゲイの世界がどうも私の中で結び付かないということもありました。

ところが、今回、そのトウコ(トム・オブ・フィンランドの本名)の生まれたトゥルクにも行きましたので、種々調べもし、また向こうに行って話を聞いてみたところ、トウコの芸術には男性の持つ力強さを意図的に押し出すことによって、それまで一般的であったひ弱で女性的という同性愛の概念を打ち壊そうとした「反骨」があったことが良く分かりました。

さらに面白いのは、現在のフィンランドでも、特に若い人たちの間で彼の人気は高いのですが、それは年配者たちの持っているキリスト教を中心としたトラディショナルな志向への反抗があるというんですね。つまりハードゲイ=レーザ―ゲイの格好をするとかだけではなくて、トウコの芸術がそうした反抗のフラッグシップになっているということなんです。

それならトーベ・ヤンソンの反骨精神と限りなく重なります。

ちなみに、西鶴が『男色大鑑』でほとんど性愛の描写をしなかったのも、若衆と念者、とくに世間的にはひ弱と思われている若衆の強い精神性を強調したのも、トーベやトウコと同じように世間一般の認識に対する「反骨」があったのではないかと私は考えています。

とくに西鶴の周辺にあった歌舞伎若衆への偏見。その通俗性への果敢な挑戦、それこそが西鶴の『男色大鑑』執筆の意図であったと考えています。大竹さん流に言うならば、辰弥と西鶴は、若衆は金でどうにでもなると思っていた金持ち連中に、くだんの親指切りの話で、一発かましてやったということなんですね。『男色大鑑』は四十篇ですから、四十発ということなりますが。。。(笑)

いずれにしても、フィンランドの芸術や文学は恐ろしく深く鋭い。。。全くもって、あなどれません。うーんまた行きたくなってきました。飛行機代、早く予約をすれば、往復8万というのもあるとの情報もあります。密かにまた行ってこようかしらん。

最初の写真はヘルシンキ市内を走るトラムです。その洗練されたフォルムが古い街並みに見事にマッチしています。フィンランドの高いデザイン性がここによく表れています。












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