イ・ソンソンに会いたかった！
（鄭炳説『韓国古典文学 授業』2019年、韓国ソウル大学校出版文化院。韓国の古典文学を知るために今一番新しい情報が入っている本。また、本書の序によれば、外国人が韓国のことを知りたいという要望に応えた内容でもあると言う。いずれ、日本語訳して出版したいと考えている。）
今度の土曜日に以下の要領でお話をさせていただきます。
////////////////////
日時：9月12日（土）午後8時から9時まで、その後はいつものようにWEB呑み会となります。
使用アプリ：ZOOM
プログラム：講演「韓国の〈性〉の世界、実は底抜けに明るい」
講演者：染谷智幸（茨城キリスト教大学教授）
参加費：無料
主催：若衆文化研究会
申し込みは以下のサイト
https://bungaku-report.com/wakashuken/
////////////////////
それで、50分程度の時間を考えていますが、やはりこの時間内ではお伝えできないこともけっこうありますので、ここで事前にちょっと補っておこうかと考えました。
今回紹介するのは、韓国の朝鮮時代以前（つまり近代以前）の性の有り様で、これがけっこう明るいものだったのでは、ということです。
具体的には上に掲げました、ソウル大の鄭炳説先生のお書きになった『韓国古典文学 授業』という本の一部「同性愛の実相」を翻訳して皆さんにお示ししようかと考えています。
時間内でそのすべてをご紹介できないので、ここではその翻訳の一部をご紹介してみます。
朝鮮に同性愛が広がっていた現実を、明白に示す作品に、陸用鼎（ユク・ヨンジョン、1843～1917）の『李聖先伝』がある。李聖先（イ・ソンソン）は先祖の功績よって忠勲都事といった官職まで得た人だが、ついにその職に就くことなく、半生を他人のために仕事をしながら生きた人であった。夫人が亡くなると新しい妻を得ることなく、隣家の少年と同性愛の関係になった。伝の原文ではこれを「風男之戯」と表現して、宮女たちの対食（同性愛）と同じと説明している。李聖先は少年に結婚するまで、自分と一緒に過ごすことを勧めて、少年が約束を破り、他の人と寝れば刀を抜いたりもした 。李聖先は自分の所有している土地をなくすほど貧乏だったが、日照りで苦しむ隣人のために雨乞いの儀式まで執り行う仁者でもあった。伝を書いた陸用鼎は李聖先が住んだ斗田里（トジョンリ）が自分の故郷で、李聖先をよく知っており一度会ったことがあるとしている。
この李聖先（イ・ソンソン）という人、面白い人ですよね。鄭炳説先生は「仁者」と書いていますが、原文の『宜田文稿』を見ますと、性質は「廉潔貞良」と書いてあります。清廉潔白にして善良な人間だと。そして欲がなくて常に貧乏、しかも日照りの時には、自分の持ち物を投げうって雨乞いの儀式などをするという優しさ。それなのに、好きになった少年が他人と寝たときには、怒り心頭に発して刀を振り回して大暴れするほど狂っちゃう(笑)。まるで上村辰弥みたいで、本当に愛すべき人ですよねぇ。
私が韓国（朝鮮）を好きなのは、こういう人が朝鮮時代にはたくさん居たんじゃないかと思うからです。大竹直子さんが紹介してくださった綿貫六助に似ているかも知れませんね。
http://someyatomo.seesaa.net/article/452993508.html
ま、辰弥しかり、六助しかり、このソンソンも同じで、変な狡知がないんですね。純真なんです、子供みたいに。
韓国には今でもこうした純真な人が居ますよ、とくにお爺さんに(笑)。日本のお爺さんはどんなに怒っても目が笑っています。でも、韓国のお爺さんは目が笑っていない、相手を本気で殺そうとするような目をしてる。だから逆に笑った時の顔は本当に素敵なんですね。その鬼と菩薩の振れ幅が半端ない！(笑)
話が脱線してしまいましたが、このイ・ソンソン（ソンソンが何かカワイイ）みたいな人を、韓国の古い記録から探してみるのが、これから楽しみでなりません。いかがです、みなさんも一緒にやりませんか。
（染谷記）
この記事へのコメント
私の祖母の父、李聖先です。本当です。
松本貴さま
コメント、ありがとうございました。
ほ、ほんとうですか。それはすごい、僅有絶無の情報です。
李聖先さんに関する古記録（韓国なら族譜だと思いますが）はあるんでしょうか。